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鍔山英次

野川の行方(きよみず)






大沢、出山下の湧泉

大沢、出山下の湧泉
 野川公園から深大寺に続くあたりを三鷹市大沢という。
 大沢は、清水が多く湧く土地という由来がある。
 昔から湧水を利用して水田・畑作が営まれ、川べりに五つの水車があって、近郊農家の粉をひいていた。
 しかし、都市化の波の中で水車は次第に使われなくなり、最後に残った峰岸さん宅の水車も、野川の改修で水が引けなくなった。
 今、峰岸さんの水車は、三鷹市の指定文化財として保存されている。


ワサビ田

ワサビ田
 大沢では、きれいな湧水を利用して、江戸時代後期からワサビの作付けが行われてきた。
 崖地の下部に石垣を築き、その下に小石を敷きつめて、湧水が流れる状態になっている。
 ワサビは、水量・水質・水温の変化に敏感で、水温の変化の少ない湧泉帯は、ワサビ栽培の好適地てあった。最盛期には、年に10万本も出荷したという。



 野川公園を下っていくと、人見街道と交差する。はけ上には広大な土と緑の台地が広かり、国立天文台へと続いている。
 道路を渡った所に、湿生植物が観察てきる湿生花園がある。その先には水田があり、周辺一帯はやわらかな緑につつまれていて、三鷹市の自然環境保全地区に指定されている。
 湿性花園の水路に沿って架けられた木の桟橋は、三鷹市とほたるの里・三鷹村の人ぴとが、ポランティアでつくりあげたもの。行政と市民か一体になってつくりあげた貴重なオアシスである。
湿性花園、三鷹市のほたるの里

湿性花園、三鷹市のほたるの里



大沢のはけと水田

大沢のはけと水田
 湧水を使って水田をいとなむ農家は、残り少なくなった。
 無農薬栽培のせいか、カワニナをはじめ水生生物が繁殖し、ヘイケポタルが自然発生している。
 また、「沢の台ほたる池」には、ゲンジボタルか生息している。この豊かな自然環境を支えている国立天文台の存在も見逃すことはできない。
 国立天文台は、敷地約33万平方メートル、広大な雑木林の中にあり、これらの樹林が、湧水の涵養に大きな役割を果たしている。
 天体観測には、暗い夜空が必須条件で、今でも重要な観測が行われており、「皆で美しい星空を守りましょう」と市民に協力を呼ぴかけている。



八幡橋付近

八幡橋付近
 毎夏開催される「野川まつリ」では、野川に舟を浮かべ、水辺での市民の交流が行われている。
 大沢では、はけの急崖から多数の横穴墓群が発見されており、近くにある古八幡社は、このあたりが、かつては大沢の中心だったことを物語っている。
 ここから調布・狛江にかけて、野川は魚がよく見えるほどの清流で、点在する住宅の中を流れていく。



この写真は創林社刊「生きている野川」「湧水探訪 深大寺」より鍔山英次氏の許可を得て転載しました。



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